2008年02月21日 (木)
時論公論「どうなる 高齢者医療制度」
<野村キャスター>
75歳以上の高齢者を対象に、今年4月から新しい医療制度がスタートします。この制度の下で医療機関に支払われる診療報酬も決まりました。飯野解説委員がお伝えします。
<イントロ>
こんばんは。
高齢者医療制度がスタートするまで一ヶ月あまり。この制度の下で医療機関に支払われる診療報酬が決まり、ようやく目指す医療の姿が見えてきました。しかし、実際に受ける医療がどう変わっていくかは今なお不透明です。果たして、誰もが安心して医療が受けられる体制が整うのか、今夜はこうした問題を考えます。
<高齢者医療制度の負担とねらい>
高齢者医療制度をめぐるこれまで議論は、医療費の負担をどうするかという問題が中心でした。そこでまず、高齢者の負担がどう変わるのか、見ておこうと思います。
P 高齢者医療制度に加入するのは、75歳以上の人たち。制度を運営するのは、都道府県ごとに作られる広域連合です。4月からは、広域連合から送られてくる新しい保険証をもって、それぞれ医療機関を受診することになります。
▲まず窓口での負担ですが、こちらはこれまでと変わりません。現役並みの所得のある人はかかった医療費の3割、それ以外の人は1割です。
▲制度ができて変わるのは、毎月支払う保険料です。これまでは年金収入が180万円未満なら、扶養家族として認められ、保険料負担はありませんでしたが、これからは、高齢者全員が保険料を払うことになります。そこで議論になったのが、新たに負担を求められる人たちの軽減措置です。福田政権になって低所得者への配慮が課題になったからです。結局、半年間は保険料を求めず、その先の半年間は本来の保険料の1割だけ払ってもらうということになりました。
●同じ収入の高齢者でも、住んでいる都道府県によって、保険料に違いが出るのもこの制度の特徴です。一人当たりの医療費が高い都道府県は保険料も高く、医療費が低いと保険料も低くなるからです。新制度を発足させる狙いはまさにその点にあります。給付と負担の関係を明確にすることで、医療費の抑制につなげようというのです。高い保険料を払うのがいやだったら、高齢者自身も、同じ病気でいくつもの病院を受診するのを控えてくださいということです。
ただし、高齢者医療制度をめぐっては、本当に低所得の人にも負担してもらう必要があるのか、そもそも75歳の高齢者だけを対象にした制度が成り立つのか、そんな制度の根幹に関わる批判的な意見が、今なお多くきかれます。高齢者医療制度の必要性や負担を求める基本的な考え方について、政府の納得できる説明が必要だということは、指摘しておきたいと思います。
<受ける医療はどうなる?>
では、高齢者医療制度ができると、受ける医療はどう変わるのでしょうか。
先週、医療機関に支払う診療報酬が決まったことで、制度が目指す医療の姿は見えてきました。しかし、実際に受ける医療がどう変わっていくかは、不透明といわざるをえません。
まず、どんな医療を目指そうとしているのか見ておこうと思います。高齢になると、いくつもの病気を抱え、入院期間が長くなることが少なくありません。そこで打ち出されたのが、入院から在宅中心の医療への転換です。キーワードは、連携、切れ目のない医療です。開業医と病院、医師や看護師、薬剤師などが情報を共有して、患者が住みなれた地域で生活を続けられるよう支えていこうということです。決まった診療報酬も、そうした体制づくりを後押する内容になっています。たとえばこういうことです。
P 慢性的な病気のある高齢者が、心身の状態を継続的に診てくれるかかりつけの医師をもち、外来で受診した場合、その医師に後期高齢者診療料という報酬が一月に6000円支払われます。この医師は、基本的には開業医。定期的にこうした診療計画を作ることが求められます。患者が抱える病気や、受診しているほかの病院を把握して、検査などが重複しないよう診療のスケジュールをたてるのです。診療のたびに、他の病院で処方された薬をチェックすることも義務付けています。検査や薬の重複を防げれば、副作用の被害を抑えて、医療費の抑制にもつながるというわけです。
P患者の病状が急変して、入院が必要になった場合はどうでしょう。在宅で過ごす患者を受け入れる病院が、かかりつけの医師から患者の情報を得て対応した場合、入院料に13000円加算されます。
一方、病状が安定して退院する時には、病院側の医師と、地域のかかりつけの医師や訪問看護師、歯科医師や薬剤師などが集まって、退院後の支援方法を話しあえば、病院に2万3000円、ほかの担当者にもそれぞれ6000円支払われます。患者が自宅に戻ってからも、かかりつけの医師を中心に専門職の間で連絡を取り合ったり、直接自、宅を訪問して処置したりした場合も、報酬を引き上げています。
<評価>
さて、どうでしょう。
たしかにこうした医療体制が整えば、患者も住み慣れた自宅で過ごすことができるので安心ですし、医療費の面でも、長く入院するより効率的だと思います。
問題は、診療報酬を手厚くするだけで、質の高い、切れ目のない医療が実現するかということです。結論から言いますと、報酬による誘導だけでは難しいと思います。これまで入院中心の医療が長く続いてきたので、地域の専門職が一緒になって患者を支えるノウハウが蓄積されていないからです。そのノウハウを高める方策を考えることこそ大切だったのですが、報酬をいくらに設定するかという議論ばかりでした。形は一応作ったけれど中身が何もない。それが今の状況です。
<課題>
では、質の高い切れ目のない医療を実現するには、何が必要なのでしょう。
▲ まず、医師を始めとする専門職の教育や研修です。高齢者のかかりつ
けとなる医師には、認知症などを評価する研修を義務付けていますが、ほかの専門職と調整する能力も必要です。一方、これまで外に出ることが少なかった薬剤師や歯科医師も、在宅患者を支える技術を身につけ、専門性を高めることが重要です。そうでなければ、連携の中心となる医師と、対等に話をすることもできないと思うからです。
▲ 地域の専門職が日頃から顔の見える関係をつくっておくことも重要で
す。定期的に勉強会を開いて、日頃から意見を言い合える関係を作っている地域では、個別の患者の対応もスムースに進んでいるからです。
そして、患者や家族に、目指す医療の方向性を理解してもらうことです。かかりつけの医師をもつことを義務付けていないので、理解がすすまなければ、結局これまでと何も変わらないからです。地域で進められている取り組みや、どのような診療にどのくらいの報酬が支払われているか理解できれば、患者や家族も積極的に意見を出すころができると思うのです。
もちろん、医師会や薬剤師会など関係団体の努力が必要ですし、高齢者医療制度を運営する広域連合も役割を果たす責任があると思います。保険料を集めて医療費を払うというだけでなく、地域住民への説明会や医療や福祉の専門職を集めた勉強会を開いて、少しでも地域医療の質を高められるよう、力を注ぐ必要があるのではないでしょうか。
<まとめ>
最後にもうひとつ指摘しておきたいのは、在宅医療を進めるといっても、核家族化が進んでいることや1人暮らしのお年寄りが増えていることを、十分考える必要があるということです。自宅で過ごすのは不安だという人には、医療と介護が受けられる施設の用意も必要です。制度が暮らし方をきめるのではなく、本人の希望に沿う形で、環境づくりを進めてほしいと思います。
高齢者医療制度がスタートするまで一ヶ月あまり。誰もが安心して医療を受けられる体制が整うかどうかは、制度に関わる人たちのこれからの取り組みにかかっています。
投稿者:飯野 奈津子 | 投稿時間:23:59

時論公論「どうなる 高齢者医療制度」 (NHK)
luming2007
发表于 2008-02-22 21:32:24 养老与医疗问题

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